夏のアツイ一瞬

京都釣組

2011年08月10日 18:18


ほんの少し満たされた湖北釣行の続編。



もうひとつの、想いを遂げようと車を走らせた。

かねてより照準を合わせておいたあの場所へ。

でも、実際のところは、やってみなければ分からないのだが。


竿を振ることも無く、今シーズンを終えそうな気がしていたが、

これも、自然の流れ。と、少々言い訳がましく。

偶然か、必然か、その時はやって来る。



車を止めて、手ぶらで散策。そう、いつものように。

そんなふうに、新たなる扉を開ける鍵を探すため、

こんなことをいったい何度繰り返してきたことか・・・・・・

もちろん、先人達に比べると、へでもない数、距離なのだけれど・・・・・



そんな私の視界の末端。

水面が割れた瞬間を、珍しくも見逃さなかった。

明らかに、これまで釣り上げた魚とは違うその雰囲気に、気持ちが高ぶる。


少し気持ちを落ち着かせながら、車まで戻る。

鍵を探す散策は中断され、何時しかタックルの準備に取り掛かる。

紐と呼んでおかしくないその釣り糸を、

幾度と無く、結んでは解きを繰り返し練習したノットで結い、

いよいよ、初めて、投げることを決めた。



そう、今日の目的は、このタックルで投げること。

投げるだけであれば、別に、先程まで訪れていた琵琶湖でも良かったのだが、

実際そのつもりだったのだけれど・・・・・

そこは、やはり気持ちの持ちようというものが存在して。



先人達の言葉や教え、願いを繰り返し、頭に叩き込んだ多くの事柄。

自身、頭では理解し、繰り返し反芻し、準備も整えた。

あとは、現場で、多くを学び、考え、自らの身にする他は無い。



初めて現場において手にした、その竿は、

節操無く、様々な釣りを楽しむ私にとって、

これまでの、どの竿よりも重く、一本芯が通っている。

その重さが、この釣りを始める心持ちの重さであり、

一本の芯の通った、潔い気持ちを生み出してくれる気がする。


そんなタックルを片手に、水辺へ向かう高揚感。

背の丈ほどある、葦を掻き分け水辺にそっと近寄った。

目前に広がる、植物に覆われた水辺。

生涯、忘れることの出来ない、一線を越える一投目。

その、重い棒を振りかざした。

・・・・・・・

見事に、身体が順応していない。

滑稽なその立ち振る舞いに、辺りには誰もいないが恥ずかしい。

タックルの、重さ、硬さ、長さ。リールの大きさや、ラインの太さ・・・・・

どれをとっても、これまでの釣りとは一線を画す、別次元。

少々戸惑いながらの悪戦苦闘。

難儀な釣りに足を踏み入れてしまったが、気持ちは更に高ぶっていく。


少しずつ、初めてのタックルに自身を合わせていくと、

次なる問いは、ルアーの動き。

はてはて、どう動かせば良いのやら、暗中模索のはじまり。

全くもって、なってはいないルアーの動きながら、

静と動、ポイントの濃度、周囲の状況などを自分なりに組み立ててみる。

そんなふうに、困惑を楽しんでいると・・・・・・


バフッ!


いきなり、である。

自分自身、信じられない事象・・・・・

分かりやすい言葉を使うと、

目が点。そのものの状況。

一瞬固まった私の身体とは裏腹に、

チキンなハートは最高潮。

もう、充分。


タックルになれるための、ものの試し。

そんな、安易な気持ちだけで水際に立ったわけではないが、まさかの捕食。

もちろん、アタックのみに終ったが、その、感動的な一瞬に心が奪われた。


我に返り、抑え切れない欲望のままにもう数投。

パフンッ!

豪快な捕食音が響いた瞬間、ルアーが空中に舞う。

・・・・・・・

一度ならず、二度までも。

まさに、感無量。



多くの先人達が、日々奮闘し、

守ろうとしている現状と、築こうとしている未来。

この瞬間、未熟ながらもその理由の片鱗を垣間見、感じた気がした。



既に気持ちは十二分に満たされ、その場から離れた。

後は、竿を置き、そのフィールドをひと通り見て回る、散策に時間を費やし納竿。



短時間ではあるけれど、初めての試み。

右も左も分からず、見よう見真似の暗中模索。

そんな状況ながら、憧れの魚からのメッセージ。

正直、響いた。


釣りで感動することに久しい昨今。

無理やり精神性を説き、心の充足をその部分で求め、

補うことが多くなってきつつある。

が、純粋に釣りの感動がそこにあった。



新たなる扉。既に開かれ、その一歩を踏み出した。

これからも、多くを学び、多くを感じ、

この、大切なモノを守り、築いてゆきたいと、そう想う。









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