サカナヘンノヒトタチ デノ デアイ

京都釣組

2011年12月14日 20:11


竿の振れない師走、週末の土曜日。

追われるように、仕事の打ち合わせで、朝から大阪へ。


難なく午前中で仕事を終えることが出来、見上げると、晴れ渡る初冬の青空。

急ぎ帰宅し、どこかの水辺へ・・・・・

との想いもあったのだが、向った先は、

翌日に伺う予定をしていた、



第15回 サカナヘンノヒトタチ展2011



と、その前に。


かつて修行時代を過ごした大阪。

当時のおぼろげな記憶を辿り、少し遠回り。

大阪の街中、心斎橋エリアの外れにある一軒の商屋。



きくや筆本舗。


雑多なビルが乱立する中、ひっそりと佇む商家の店構えが今も残る。

創業は明治18年だとか。

じゅん屋」のじゅん氏が出展されているということで、

向う、サカナヘンノヒトタチ展2011。

この作品展を好機に、「書」の道に衝撃を受けた氏への手土産にと。


生憎、店はシャッターが半分下り、閉店の様相ながら、

店先から電話を入れると、気持ちよくシャッターが上がる。

「書」の道の嗜みなど無く、逐一説明を求める私に対し、

店の主人には、親切丁寧に対応をして頂き、

挙句の果てには、店奥の小上がりで、お茶まで頂きあれやこれやと。





同じ タケカンムリ の 竿と筆。

どこか、釣具屋に並ぶ竿を選ぶような感覚。

そう、

「弘法筆を選ばず」、「くろぼう筆を選ぶ」。


・・・・・・・・・


店主との愉しい会話の中、決めかねている私に、店主から一本の衝撃。


オロンピー 三号 幽渓 きくや造


他の筆と一線を画した朱塗りが渋い、

その名「幽渓」。

渓流での釣りを、三本の指に入る 好みの釣りだと称する氏に相応しいと。

写真で見るだけでは、まさに和竿の趣きある、一点もの。

時に、竿を筆に持ち替え、釣腕さながらに、幽玄なる「書」を期待して。


少々長居が過ぎる、閉店後の困った客は、

良き筆、良き店との出会いに意気揚々と、

この一本を手にようやく退店、一路 作品展へと歩を進める。



会場「g+concept」

少々怪しげ感漂う雑居ビルの4階。

エレベーターを降りると目の前に出展者の作品「潮かつお」が迎えてくれた。



更に一歩足を踏み入れると、不在の心配は安堵に、じゅん氏の姿。

先日の深海魚釣行の非礼を詫び、再会を喜ぶ。

「来てくれると思っていたよ。」との氏の言葉が、ことさら嬉しく。


まずは作品を一巡。

躍動感溢れる写真や、幻想的な画をはじめ、

釣行写真や記録、美しき書や形創られた釣具や作品。

芸術感溢れる作品や、手作り感に温かさ感じる作品たち。

どれもこれも、作者の心が、それぞれに表現された見所に満ちている。


そして、氏の作品は「本」。

氏の心に残る釣行が、ブログ記事をベースに加筆修正、書き下ろされ、

未見の写真も挿入された圧巻の二冊。

少し走り読みさせて頂き、思わず、

「これ売ってんの?」との愚問に、氏を少々困惑させるほど。

書棚に並べておきたいと思った来場者は少なくないはず。

また、その二冊と共に、思い出の魚たちを釣り上げた氏の写真をまとめたものが、

オカバコ(タックルボックス)に、

ルアーやタックルではなく、「思い出」として納められているのが印象的。



仕事柄、個展や美術展に足を運ぶことも少なくないのだが、

至ってそういう作品展では、気難しい表情で、

構図がどうだの、色使いがどうだの、形而上学的に云々・・・・・・

と、ある種の緊張がいつも隣り合わせなのだけど、

このサカナヘンノヒトタチ展とその各作品においては、

釣りに例えるなら、

魚を掛けた緊張から、釣り上げ、解き放たれたかのような、

釣った後の喜びや笑顔に溢れ、和やかで、緩やか。

仕事や遊びを、魚を通じて、自然そのものを大切にする、

そんなサカナヘンノヒトタチの気持ちが溢れているよう。



ちょうど作品を一巡した頃に訪れた、新たなる出逢い。

ブログ「MIDNIGHT EXPRESS-active!-」のueda氏が来場。

幾度か、ブログでのコメントで交流はあったのだが、お会いするのは初めて。

互いに「近々琵琶湖でお会いできるという予感」があったことに、驚きながらも喜び、

水辺で糸垂れる釣人が、街中のギャラリーで出逢うという、不思議な状況の中、

じゅん氏のお陰も相まって、

機知に富む氏との会話は、初めてお会いしたとは思えないほどに愉しく、尽きない。

ぜひとも、またゆっくりとお逢い出来るのを楽しみにしているところ。



そして、もうひとつ、再会なる出逢いが。

作品展の主催者の一人、啼魚氏。

夏の終わりの「sum camp」で始めてお逢いして以来の再会。

あまりお話の出来なかったsum campと比べ、今回少しお話が出来、

おかげで、来年2012年の楽しみがひとつ増えた。

また、氏は「カヤックで釣をする人」。

この秋、初めてカヤックでの釣りを経験した私としては、

是非ともいつの日か ご一緒に浮き漕ぎく、また、色々とお話が伺えればと。



Photo: じゅん氏

そんな、サカナヘンノヒトタチ展2011

作品展というより、サロンといった様相の和やかな空間。

趣味として、仕事として、釣りとして、

日常がちょっとだけ魚の方に偏ってしまった方々の

感性や想いに溢れており、

入れ替わり、立ち替わり訪れる、

サカナヘンノヒトタチ展を愉しむヒトタチもまた

サカナヘンノヒトタチよろしく、あちらこちらでアツい会話が弾む。

この愉しい雰囲気は、

根本にある、魚という自然なモノを通した、

釣り遊びの愉しみ、食の愉しみ、モノヅクリの愉しみに在るのだと感じる。


そんな居心地の良い空間、作品、会話が愉しく、少々長居。

少し後ろ髪を引かれながら、夕刻、作品展を後に。



今回第15回を迎えられたらこの作品展、今後の更なる展開が愉しみ。



新たな、人や作品との出逢いや再会。

これもひとえに、釣りのお陰、人のお陰。

そんな、様々なものによって支えられたこの一年もあとわずか。

陽が暮れ、寒さが身に沁みる中、

心はホッと温かくなる、そんな作品展に感謝。

















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