Black Night
私にとって、殆ど経験の無い夜釣りに足を向かわせたのは、
竿の振れない週末を重ね、業を煮やしたからだけでなく、
日々更新される、サムルアーズの熱きフィッシングレポートに感化されたこと。
また、季節は既に秋。
秋の夜長の過ごし易さや、
集中力を妨げる、蚊をはじめとする嫌な羽虫の季節も終り、
既に自身のウエーディングシーズンを終え、
単独釣行においても、水に浸かる危険性も無い。
また、何よりも、不釣の続くここ最近において、
闇夜に対する恐怖心よりも、
釣果への渇望する欲求が勝ったことに他ならない。
そんな、秋の夜長のBlack Night。
本来ならば、20:00頃から夜半過ぎまでの予定ながら、
そんな日に限って、テレビでの日本代表サッカー観戦。
もちろん、晩酌を嗜みながらの。
不本意な試合を見終え、少し横になり、アルコールを抜くことに。
このところ、ほぼ毎夜の度毎に、夜中になぜか目が覚める。
この日もほぼ定刻の00:30。いつものように目覚め、重い身体を起こす。
タックルは既に準備済み。
いくつかのブログへのコメントを入れさせて頂き、
いざ。
ほぼ初めてと言ってよい夜釣り。
ポイントの選択は、ここ最近の状況から理解できてはいたつもりだが、
少々ズレがあり、要素がひとつ欠落しているのは承知の上ながら、
通い慣れた、いつも始める秋のポイントへと車を走らせる。
湖岸の道は、さすがに連休の始まりの様相で、そこかしこに釣り人の姿と車。
車を止めるにも一苦労しながら、時計の針は午前二時。
先行者への配慮から、離れたポイントから竿を振り始めることに。
背後では、秋の虫たちが涼しげな音色を奏で、
頭上には、雲の切れ間からオリオンの煌きが覗く。
季節の進行を感じながら、少しずつ、ポイントを移動。
暗闇に目が慣れた頃、幸い浜には先行者の姿が無いことに気付き、
その核心に徐々に歩み寄り、射程距離に捕らえたところで、腰をすえる。
既に天空の雲は去り、一面の瞬く星空の下、
普段の日中の釣行では得られない、秋の夜長の心地よさが沁みる。
数投試み、反応が得られず、他方向にも様子を見、
竿を置き、煙を揺らせ場を休めることも試みる。
暗闇の中、一投毎に神経が鋭敏になり、集中力が高まるのを感じる。
が、気分はとてもニュートラル。久しぶりに感じる穏やかな心地よさ。
湖面は静かで、ボイルやライズも無く、小魚のつくる波紋すらない。
が、数度目にしてその核心で。
水面が割れることもなく、音すらもない、スウッと吸い込まれるような違和感に、
瞬間的にアワセを入れる。
久しぶりの魚信に心が躍り、まず一本。
大魚には届かないが、サイズではない充実感を感じ、
再度 場を休めるために余韻に浸る。
闇夜の天空に煌く宝石の如く星達、
背後で奏でられる虫たちのセッション。
緩やかに吹く夜風は、この上なく心地よく、充実した秋の夜長。
そんなふうに、竿を振る時間より、夜を楽しむ時間の方が長いようなBlack Night。
その後のしばらくは、時折コツッとしたアタリを感じるだけの時間が過ぎ、
おかげで集中力はさらに研ぎ澄まされる。
そして、それまでの沈黙が嘘であったかのように訪れるラッシュ。
サイズは、大台に二歩ほど及ばずではあったが、
時に連荘で訪れる、心地よい魚の引きに満ち足りた。
ここで帰れば良かったのだが、飽くなき欲求に負けたのか、
もう少しこの夜のひと時を楽しみたかったのか
少し粘ってしまった結果、足元僅か数メートル、大魚を最後にバラシてしまう・・・・・
詰めの甘さはお手のもの、今夜もやはり やらかした。
おかげで集中力は既に途切れながらも・・・・・・
とうとう、朝日を迎えてしまう・・・・・・
気がつけば、いつの間にやら辺りは多くの釣り人の姿。
夜明けのほんの一瞬。
湖面は随分賑やかに。
あちらこちらで生命感が躍動する歓喜。
対照的に、どの釣り人の竿にも生命感を得ることはなかったが・・・・・
もちろん、私も同様に。
そして、朝日が昇りきる前に、私の初めての Black Night、幕を閉じる。
心地よい、秋風に包まれながらの深夜釣行。
サイズや数では計り知れない、釣りの楽しみ。
またひとつ、小さい秋を見つけました。