2011年08月18日
スズメバチの仕返し

あれは、夏の暑い朝のことじゃった。
その日、釣り人は僅かな夏休みを堪能しようと、朝も早ようから、
自然豊かな湖国の水に浸かって、竿を振って居ったそうな。
この日の釣り人。
とにかく、水面を割って出る魚を釣りたくてな、
トップウォータープラグ、と呼ばれるルアーだけで挑んで居ったと。
真夏のこの時期のことじゃ、早朝であれば、
サイズはひとまずおいておいて、この場所では楽しい釣りができるはずじゃった。
じゃが・・・・・・
車を止めて、ポイントまで少し歩くと・・・・・・
なんか変じゃ。
湖面を激しく、水飛沫が上がっておるようでの、
一瞬、釣り人は大魚のライズかと見間違えたとかどうだとか。
が、これはイカン。
なんと、この夜明け少し過ぎの朝っぱらから、
元気に泳いでおる人が居ったそうな・・・・・
それも、一直線に沖まで泳ぎ、
ちょうどキャストの届く辺りで、ご丁寧にUターン。
それも、なん往復も繰り返しよる。
これでは、ポイントはもう壊滅状態じゃ。
踵を返そうとした釣り人じゃったが、ここまで歩いて来てしもた。
どうせ引き返すなら、釣りながら戻ろうということにして、
泳者から少し離れて水に入り、
十二分に安全な距離をとってから竿を振り始めたんじゃと。
じゃが・・・・・
離れておっても、さすがに・・・・・釣れん。
せっかくの早朝のマズメ時も台無しじゃ。
徐々に移動し、ようやく随分離れた頃に、泳者は去って行ったと。
釣り人は、諦め気分ながら、
水面を割って魚が出るのを、今か今かと待ち続け、ポッパーを投げ続けておった。
が、限界じゃ。
少しルアーを潜らせようと、山岡どんの創った、唇の無いルアーをひょいと投げてみた。
すると・・・・・・・
一撃じゃ。
残念ながら、小さい魚じゃったが、釣り人はたいそう喜んでな、
一匹釣れた安堵感からか、釣り人は再びポッパーを結びよった。
山岡どんの創るポッパーを頼んではみたものの、
まだまだ手元に届く見込がないのでな、
久しぶりに舶来の品を使ったそうじゃ。
なにやら、現代のポッパーの原型になったらしいPOP-Rと呼ばれる、
メリケンのポッパーでな、それで釣りたかったんやと。
すると、先ほどの一匹から直ぐのことじゃ。
パシャッと気持ちのエエ音がしてな、水面が割れたんじゃと。
これまた、先ほどと同じような小魚じゃったが、
玩具のようなメリケンのルアーで釣って、少々ご満悦の表情をしておった。
じゃが、ここまでじゃった。
飽きもせず、ずうっとそのポッパーを投げたそうじゃが、それ以降はウンともスンとも。
随分と水中を移動し、とある岬の先端に差し掛かった頃のことじゃ。
「・・・・・ ・・・・・」
「ん?」
「ぶーん、ぶーん。釣り人さ、助けてけろ。」
「ん?」
どうやら、どこかで助けを呼ぶ声が聞こえてきたそうな。
「前に一度あったがな。あん時ゃ、偉そうな かぶとむし じゃったが、はて・・・・・」
釣り人は、以前出逢った、お礼も返してこない、
音沙汰無しのかぶとむしのことを思い出しておった。
じゃが、辺りを見てもそんな姿は見えん。
声は聞こえるが、その声は、もう少し先の浜で、
危なくも胸まで水に浸かって、竿を振って喚き散らしている、数匹の金髪サルの声じゃ。
再び釣り人はポッパーを投げてみるが、どうも気になる。
すると、やはり。
「ぶーん、ぶーん。早よう、助けてけろ。」
「・・・・・ ・・・・・」
釣り人が探せないでいると・・・・・
「下手に出てりゃ、知らん振りしやがって!やい!釣り人、ここや、ここっ!」
その大きな声にびっくりして釣り人が目をやると・・・・・
なんとなんと。一匹のスズメバチが溺れ悶えて居ったそうな。
「あらぁ、スズメバチどん。いつもは飛んどるお前さんが、水浴びしとるのか。」
と、からかう釣り人。
これには、とうとうスズメバチも切れてしもうた。
「早よう助けんかったら、このケツの針、お前にぶっ刺してやるど!」
その、厳ついガラの悪そうなサングラスのような目が光ったとかどうだとか。
一瞬たじろいだ釣り人、さすがに、以前のかぶとむしのように、
両手で優しく掬ってやるわけにもいかず、
かといって、釣竿で邪険に扱って後で針でも刺されたら溜まったもんじゃない。
ギャーギャー喚き散らすスズメバチを見ながら、少し思案したんじゃと。
でもな、結局のところ、釣り人はそのままスルーしてしまいよったんじゃと。
少々残酷じゃが、やはり、針で刺されるのが、たいそう怖かったらしい。
その後、そのスズメバチがどうなったかは誰も知らん話じゃがの。
釣り人は、その後もしばらく竿を振ったそうじゃが、
もう、魚は釣れんかったそうな。
浜まで移動したが、相変わらずやかましい、竿を持った金髪のサルたちもイヤで、
今日は納竿じゃと、車に戻り後片付けを始めたそうな。
すると、じゃ。
急に大きな物音が釣り人を襲ったんじゃ。
大きな大きな羽音で、
「ぶーん!ぶーん!!ぶーん!!!」と。
なんと、大きな大きなスズメバチじゃ。
先ほどのやつとはひと回りほど大きなスズメバチが、釣り人の周りを、
「ぶーん!ぶーん!!ぶーん!!!」
とんだ、スズメバチの仕返しに、
こりゃあ、大変じゃと、身をかがめ、ウェーダーを履いたまま、
車に乗り込んだ釣り人。まだ車の周りを飛び回るスズメバチから、
大急ぎでその場を逃げ出したんだと。
いやいや、忌み嫌われとる虫といえど、ひとつの命には違いない。
少々後味の悪い釣行になったそうじゃ・・・・・
Posted by 京都釣組 at 08:18│Comments(4)
│ブラックバス
この記事へのコメント
おはようございます。
今回の救出シリーズも読み入ってしまいました!
珍虫が溺れてるシーンに出くわすって事は、くろぼうさんが
それだけ現場に足を運んでるからですよねー
私も見習って虫を助けなければww
・・・って、私もスズメバチなら放置しちゃいますが・・・
今回の救出シリーズも読み入ってしまいました!
珍虫が溺れてるシーンに出くわすって事は、くろぼうさんが
それだけ現場に足を運んでるからですよねー
私も見習って虫を助けなければww
・・・って、私もスズメバチなら放置しちゃいますが・・・
Posted by Abah at 2011年08月18日 09:14
こんばんは。今回の釣行物語も読み入ってしまいました(笑)。
この時期ハチが本当に怖いですね。
我が家も先日、ハチの巣の除去をしました。
くろぼうさんは、水面を良く観察されているのですね。
自分も虫の助け声が聞こえるようにアンテナをはらなければ、
釣果に繋がらないと思いました。
ハチに追いかけらるのも苦手ですが、
マナーの悪い方がいる浜は、もっと苦手です(笑)。
この時期ハチが本当に怖いですね。
我が家も先日、ハチの巣の除去をしました。
くろぼうさんは、水面を良く観察されているのですね。
自分も虫の助け声が聞こえるようにアンテナをはらなければ、
釣果に繋がらないと思いました。
ハチに追いかけらるのも苦手ですが、
マナーの悪い方がいる浜は、もっと苦手です(笑)。
Posted by 赤い釣人 at 2011年08月18日 22:16
→Abahさん
コメントありがとうございます。
ようやく下界へ戻られたようで。
また日々の更新記事が楽しみです。
今回の釣行。
救出作戦は残念ながら実行する事が出来ず、
少々後ろ髪が引かれる思いとなってしまいました。
実は、その二日後の釣行時、
またしても「ぶーん!ぶーん!!ぶーん!!!」
やっぱりスズメバチはいただけません・・・・・
コメントありがとうございます。
ようやく下界へ戻られたようで。
また日々の更新記事が楽しみです。
今回の釣行。
救出作戦は残念ながら実行する事が出来ず、
少々後ろ髪が引かれる思いとなってしまいました。
実は、その二日後の釣行時、
またしても「ぶーん!ぶーん!!ぶーん!!!」
やっぱりスズメバチはいただけません・・・・・
Posted by くろぼう at 2011年08月19日 11:06
→赤い釣人さん
いや、赤い鯰人さんとお呼びしたほうが?
コメント頂きありがとうございます。
虫からの助けばかりが耳に入って来、
大魚からの囁きはまったく私には届きません・・・・
かぶとむし→スズメバチ→次はコガネムシなんかを期待しておりますが・・・・
それにしても、季節柄仕方ありませんが、
虫より、たちの悪いサルも多く出没していますのでご注意を。
いや、赤い鯰人さんとお呼びしたほうが?
コメント頂きありがとうございます。
虫からの助けばかりが耳に入って来、
大魚からの囁きはまったく私には届きません・・・・
かぶとむし→スズメバチ→次はコガネムシなんかを期待しておりますが・・・・
それにしても、季節柄仕方ありませんが、
虫より、たちの悪いサルも多く出没していますのでご注意を。
Posted by くろぼう at 2011年08月19日 11:22
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